研究概要 |
129/Sv,C57Bl/6が混在した遺伝的背景のIRS-2,IRS-3ダブルヘテロ欠損マウス同士の交配により得られたオスマウスの解析では、6週齢では9群マウスの体重、血糖値に差を認めなかったが、14週齢時点ではIRS-2欠損マウスはIRS-3遺伝子型に関わらず有意な空腹時血糖上昇を認め、そのうち20-30%の個体が空腹時血糖300mg/dl以上の重症糖尿病を発症した。重症糖尿病個体の膵組織では膵β細胞中のインスリン顆粒がほとんど認められず、インスリン含有膵β細胞はほぼゼロにまで激減していた。また、膵β細胞の機能維持に重要と考えられるPdx1やGLUT2の発現も著しく低下していた。もともとのCBAとC57Bl/6の遺伝的背景では重症糖尿病を発症するIRS-2欠損マウスは0%で、C57Bl/6に戻し交配を進めても重症糖尿病を発症するIRS-2欠損マウスは認められなかったが、129/Svの遺伝的背景が高まるにつれ重症糖尿病を発症するIRS-2欠損マウスの割合が増加した。以上より、129/Svの遺伝的背景にはIRS-2欠損状態で糖尿病を著明に悪化させるmodifier gene(s)が存在すると考えられた。そこで129/Svの遺伝的背景でIRS-2欠損状態において糖尿病を著明に悪化させるmodifier gene(s)のマッピングと.Positional cloningによる同定を開始した。まず129/SvマウスとC57Bl/6マウス間で多型を有するDNA markerを全染色体で100個以上同定した。C57Bl/6Jに8回戻し交配をしたC57Bl/6J系統のオスIRS-2ヘテロ欠損マウスと129/Sv系統野生型メスマウス交配し、現在、50匹以上のIRS-2ヘテロ欠損オス、メスマウス(F1マウス)を得ていて、F1マウス同士の交配を進めている。
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