研究概要 |
ステロイドパルス療法が奏功する分子機構の解明を目的として、本年度はAP-1クラスター形成抑制の分子機構の解析を、高精細三次元画像解析システム(ZEISS-META共焦点レーザー顕微鏡/TRIグラフィックプログラム)とAP-1応答遺伝子をレポーターとした転写活性化能の測定により行った。 1.AP-1クラスター形成とその合成ステロイドによる抑制作用:サイトカイン関連遺伝子発現に重要な転写因子の1つであるAP-1(fos/jun)と蛍光蛋白(GFP)のキメラ蛋白はホルボールエステル(TPA)刺激により培養細胞(COS及びPEER)の核内で数百個の粗なクラスターを形成することが判明した。このクラスター形成はAP-1応答遺伝子であるcollagenase-3/luciferase reporter遺伝子のTPA依存性転写活性化と相関していた。このクラスター形成に際し、生理的グルココルチコイドであるコルチゾールの生理濃度(10^<-9>M)と高濃度(10^<-6>M)で48時間前処理してもAP-1のクラスター形成は変化しなかったが、メチルプレドニゾロン10^<-6>Mで処理すると、クラスター形成が著明に抑制されることを見い出した。クラスター形成はメチルプレドニゾロン処理後にAP-1/GFPキメラの発現ベクターの再導入により観察しているので、クラスター形成の低下はAP-1の発現低下やdown-regulationではないことが確認された。GR、既知の共役因子(CBP/p300、p160 family(SRC-1、TIF2)、DRIP100、TRAP220、GCN5)の種々の蛍光蛋白とのキメラを一定量導入し、同様のステロイド処理後の生細胞での細胞内局在と数を定量したところGRはdown-regulationが観察されたが、共役因子の数に変化は認めなかった。以上の結果は大量の合成ステロイド投与により未知の因子が誘導され、あるいは低下し、AP-1クラスター形成が抑制されることを強く推測させた。 (2)ヒトでのステロイドパルス療法前後での末梢血リンパ球におけるAP-1クラスター形成の検討を行うためfos、jun、GRと蛍光蛋白(GFP, YFP, CFP)とのキメラを組み込んだアデノウイルスベクターを作成した。
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