(目的)リンパ管内皮細胞よりリンパ管の発生、新生に重要な分子を網羅的に単離同定しその後、リンパ管新生の分子基盤を明らかにする。(方法)(1)マウスリンパ管腫モデルを作製し、そのリンパ管内皮細胞をラットの腹腔内に注入し細胞の表面抗原に対する抗体を網羅的に作製する。(2)リンパ管内皮細胞に特異的に発現しているLYVE-1に着目し、マウスLYVE-1に対するモノクローナル抗体を作製しリンパ管内皮細胞を単離・純化し、血管内皮細胞と発現している分子、機能などの点を比較検討する。(結果)(1)マウスリンパ管腫細胞をラットの腹腔内に注入し細胞の表面抗原に対する抗体作成の過程でXXXクローンのハイブリドーマをELISA及び免疫染色でスクリーニングした結果YYクローンのリンパ管腫由来リンパ管内皮細胞を特異的に認識する抗体が得られた。その後、様々な方法でこの抗体の認識する分子を同定する試みをしたが、結果的には不成功に終わった。(2)マウスLYVE-1に対するモノクローナル抗体を3クローン樹立することに成功した。3クローン間に差はなく、免疫組織染色、FACS解析においてリンパ管内皮細胞を認識できる抗体であることを確認した。現在までにリンパ管内皮に特異的と報告されている分子(SLC、Podoplanin、prox1)は、その報告通りであったが、血管内皮細胞で発現が報告されている分子に関しては弱くリンパ管内皮細胞に発現する分子群(CD44、TIE2、Flt1)と同等に発現する分子群(CD31、TIE1、Flk1)に分かれることを見出した。(考察)LYVE-1に対するモノクローナル抗体の樹立に成功し、リンパ管の同定、純化、単離が可能になったことは、これまでの多くのtoolを海外に頼ってきた国内のリンパ管研究者には朗報であると考える。今後、この抗体を用いて網羅的な解析手法を用いて血管内皮細胞と比較しつつリンパ管内皮細胞を明らかにしていきたいと考えている。
|