研究概要 |
本研究は日本人TTP患者でのADMTS13遺伝子変異、および正常人の多型を包括的に検索し、変異のカタログを作成すること,これらと正常人での多型とADMTS13活性の関連を調べ活性に影響するものを推定し,これをin vitroの発現実験で確認すること,さらに抗ADAMTS13抗体出現の早期診断を目的としてADAMTS13の組み換え蛋白を作成し、これを抗原とした抗ADAMTS13抗体の検出系を確立することを目的としている。今年度はTTPを有しない約50名を対象としてADAMTS13遺伝子のexon領域で新規遺伝子多型のスクリーニングを行った。その結果,数種類のSNPsが発見された。この中で対立遺伝子頻度が比較的高かったQ448E, P475S, S903Lの3種類について,iv vitro mutagenesisによるHEK293細胞での発現解析を行い,一アミノ酸置換が機能に与える影響を観察した。その結果,Q448E, S903Lについては正常配列と同等のADAMTS13活性がみられる一方,P475Sではその活性が著明に低下することが明らかとなった。次にこれら多型と血栓性疾患の関連を調べるため,遺伝子-疾患関連研究を行った。すなわち,コントロール約300名,虚血性脳血管障害約200名,冠状動脈疾患約200において、3つの遺伝子多型の遺伝子型頻度を比較した。その結果,448Eの頻度が冠状動脈疾患においてやや高い傾向を認めたが統計学的に有為ではなかった。今後症例数をふやすとともにADAMTS13の基質であるVWF自体の活性も測定してゆきたい。またADAMTS13の組み換え蛋白が作成されたので,来年度はこれを用いた抗体の作成を進めてゆく予定である。
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