研究概要 |
新規ケモカインCXCL16の関節リウマチ(RA)滑膜組織での発現を解析したところ、RA線維芽細胞様滑膜細胞、およびマクロファージ様滑膜細胞よりCXCL16の発現がみられた。RA線維芽細胞様滑膜細胞からのCXCL16の発現は、TNF-α,IL-1β刺激により亢進し、TGF-β刺激で抑制された。CXCL16のレセプターであるCXCR6の発現をフローサイトメーターで解析したところ、末梢血と比較して、RA滑膜組織のCD4 T細胞およびCD8 T細胞において、CXCR6の発現頻度は上昇していた。またT細胞の活性化マーカーであるCD154,ICOSは、滑膜組織のCXCR6陽生T細胞でその発現頻度が亢進していた。IL-15で末梢血T細胞を刺激するとCXCR6の発現亢進がみられ、そのT細胞は可溶型CXCL16により細胞遊走され、また固層化したCXCL16により抗CD3抗体刺激によるIFN-γの産生が亢進された。 抗CXCL16抗体を関節炎モデルマウスである、コラーゲン誘導関節炎マウスに投与したところ、コントロール抗体投与群と比較して、モデルマウスの関節炎は有意に軽減され、組織学的に炎症細胞浸潤、および骨破壊が抑制された。 これらの研究結果より、CXCR6陽性の活性化されたT細胞は、CXCL16との相互作用によりRA滑膜組織へ浸潤していると考えられる。またCXCR6陽性T細胞はtype-1型のサイトカインを産生することが報告されており、CXCL16刺激によりそれらのサイトカイン産生が亢進されていることが推測され、RAの病態形成に深く関与していると考えられる。以上よりCXCL16/CXCR6相互作用阻害剤は、T細胞の浸潤・活性化抑制によりRAに対する新規治療薬となりうることが示唆された。
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