研究課題/領域番号 |
15659239
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
喜多 英二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90133199)
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研究分担者 |
前田 光一 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30295795)
三笠 桂一 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (80209725)
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キーワード | シンデカン / 気道感染 / 粘膜炎症 / ケモカイン / 微生物接着 / 肺炎連鎖球菌 / サーファクタント |
研究概要 |
ヒト気道上皮細胞(BEAS-2B株)にP. aeruginosa N-42温度変異株感染2時間後の培養上清中のシンデカン(SYN-1)量は、MOI(細胞あたりの感染菌数)に比例して増加した。感染によるSYN-1放出の亢進は、細胞表面での代謝回転の亢進によることが、代謝標識法とmRNA定量から判明した。培養液中のSYN-1の濃度は感染直後から直線的に上昇し、感染8時間でピークに達した後も高い濃度を維持するが、ケモカイン(IL-8、MIP-2)は感染6時間以後に急激に増加し、SYN-1放出がケモカイン産生の引き金を引いたと考えられた。 Streptococcus pneumoniae(肺炎レンサ球菌)のマウス肺炎モデルでの解析結果から、抵抗性マウス(BALB/c)では72時間の観察期間中に死亡例は見られなかったのに対して、感受性(CBA/Ca)マウスは、重篤な菌血症を起こし36時間までに全例が死亡した。CBA/Caでは、SYN-1の放出が顕著で感染4時間でピークに達した後、8時間でもなお高い濃度が維持された。BALB/cは、SYN-1放出は一過性で、感染後2時間をピークに減少し、8時間ではほとんど検出できず、このようなSYN-1濃度の推移は両マウスの肺内菌数の動きとほぼ並行していた。CBA/Caの肺胞洗浄液(BALF)内では、KC、MIP-2がMCP-1よりも優位であり、気道への著明な多形核白血球の浸潤が引き起こされるのに対して、BALB/cのBALFでは逆にMCP-1がMIP-2、KCよりも優位で、単核細胞の浸潤が主であった。免疫沈降解析で、CBA/CaのBALF中では遊離SYN-1とサーファクタント(SP-A)が複合体を形成し、SP-Aのオプソニン活性低下が顕著であった。 以上の結果から、SYN-1遊離の亢進が気道局所での感染抵抗性を規定する重要な因子であると考えられた。
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