研究概要 |
平成16年度syndecan-1knockout(SYN-1KO)マウスを用いた肺炎連鎖球菌の気管内感染肺炎モデル解析で、以下のことが明確になった。 1.SYN-1KOマウスは強毒株感染に対し強い抵抗性を示し、マウスの感染死は認めない。 2.感染時に精製SYN-1 ectodomainをSYN-1KOマウス気管内投与すると、野生型マウスと同レベルまで感受性が亢進する。 3.感染後のSYN-1KOマウス肺内でのchemokine profileは、MCP-1>MIP-2、KCを呈し、弱毒株感染野生型マウスと同パターンを示した。 4.感染後のSYN-1KOマウス肺胞気管支洗浄液(BALF)中のsurfactant-A,-Dは、野生型マウスと異なり、85%以上が遊離型で、BALFに高いopsonin活性が存在した。 5.肺炎連鎖球菌死菌体気管内投与後のBALF内SYN-1遊離量を年齢別野生型マウスで比較すると、3週令でBALF内SYN-1遊離量は最も高値で、40週令が最低値であった。遊離surfactant-A,-D量については12週令が最高値で、その他の週令マウスでは低値であった。 上記1〜5の結果を踏まえて、SYN-1遊離は、遊離型surfactantのopsonin活性を気道内で発現しえるが、過度のSYN-1遊離はsurfactantと結合するため、surfactantのopsonin活性を低下させ、気道内のinnate immunityを減弱させると考えられた。週令が異なるマウスでの解析結果から、小児ではSYN-1遊離が過度になり好中球主体の顕著な炎症反応が、高齢者ではSYN-1遊離が少なく炎症反応は抑制されるが、surfactant低産生クリアランスが低下すると推測された。
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