研究課題/領域番号 |
15659239
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
喜多 英二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90133199)
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研究分担者 |
三笠 桂一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80209725)
前田 光一 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30295795)
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キーワード | respiratory infection / syndecan shedding / S.penumoniae / innate immunity / pneumonia / MMP-7 |
研究概要 |
呼吸器感染における気道内炎症反応の初期応答解明を目的として、年齢層の異なるマウスとsyndecan-1 knockout(SYN-1KO)マウスにおける肺炎連鎖球菌気管内感染モデルを用いた解析から、以下のことを明らかにした。 1)若齢マウス(4週齢以下)では、気道上皮に幼若な上皮細胞の割合が多く、肺炎連鎖球菌感染で強いMMP-7活性化とsyndecan-1 sheddingを誘発し、結果として好中球主体の顕著な炎症応答を招き、浸潤好中球による気道傷害をきたす。 2)高齢マウス(12週齢以上)では、気道上皮に幼若な上皮細胞の割合が低いため、肺炎連鎖球菌感染によるsyndecan-1 sheddingレベルは低いが、同時に上皮細胞でのsufactant産生量も少ないため、炎症応答は弱いが、肺でのクリアランスが低下し、MMP-7の活性化が低く、組織修復が弱い。 3)6〜9週齢マウスでは、肺炎連鎖球菌感染後に一過性のsyndecan-1 sheddingと単球主体の炎症反応を認め、MMP-7活性化は感染後期に顕著で、急速な炎症終結と組織修復が認められた。 4)SYN-1KOマウスは強毒株感染に対し単球主体の炎症反応と感染後期のMMP-7活性化を認め、強い抵抗性を示した。感染時に精製SYN-1 ectodomainをSYN-1KOマウス気管内投与すると、好中球主体の炎症反応を呈し感受性が著しく亢進した。 以上の結果から、呼吸器感染において、気道上皮におけるsyndecanの遊離強度と持続期間が、その後の肺内炎症強度と質的特性を規定することが、確認された。この研究成果から、syndecan-1遊離制御が呼吸器感染症における抗生剤治療の補助療法として、有効になる可能性が示唆された。
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