研究概要 |
【目的】Fenretinide(FR)は、神経芽腫(NB)細胞にアポトーシスを誘導し、臨床応用が期待されている新規合成レチノイドであるが、その作用機序はまだ完全に解明されていない。最近、ストレス応答性シグナル伝達路であるJNK,p38 MAPKシグナル路の持続的活性化とアポトーシスとの関連が注目されている。そこで、NB細胞株において、FRによるストレスシグナルの活性化について検討した。 【方法】当施設で樹立されたヒトNB細胞株のうち、FR感受性株としてKP-N-TKを、耐性株として、KP-N-TKをFR存在下で培養して樹立したKP-N-TK(FR-R)株とKP-N-SIFAを用いた。これらを10μMのFR存在下で培養した際のアポトーシスをTUNEL法とWestern blot法(WB)によるcaspase活性化で評価した。細胞内活性酸素種(ROS)の経時的変化を、蛍光色素であるCM-H2DCFDAを負荷したフローサイトメトリーで検討した。WBにて、JNK,p38 MAPKの燐酸化を検討した。 【結果】FRはKP-N-TK細胞において、ROS依存性にJNK,p38 MAPKを持続的に活性化し、アポトーシスを誘導した。一方、KP-N-TK(FR-R)とKP-N-SIFAにおいては、FRによる細胞内ROS誘導とJNK,p38 MAPKの持続的活性化が生じていなかった。 【考案・結論】FR感受性NB細胞株では、FRによるROS依存性のJNK,p38 MAPK持続的活性化が、アポトーシスと関連していることが示唆された。一方、FR耐性NB細胞株では、FR存在下でもこのシグナル伝達が生じておらず、このことがFR耐性と関連していると考えられた。
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