本年度はアトピー性皮膚炎モデルマウスのトランスクリプトーム解析を行った。表皮特異的カスパーゼ1トランスジェニックマウス(KCASP1Tg)と、同腹の対照マウスより得た表皮で発現する遺伝子の網羅的解析を試みた。それぞれの組織よりpoly(A)+RNAを抽出し、蛍光ラベルcDNAを作製したのち、DNAをプロットしたマイクロアレイにハイブリダイズし、レーザー光により蛍光シグナルを検出した。マイクロアレイには、FANTOMデータベースのマウスcDNAから4500の遺伝子をプロットしたアレイを用いた。シグナル強度の変化のある遺伝子についてクラスター分析を実施した。Caspase-1が他の遺伝子発現に及ぼす影響を遺伝子の機能別に検討するため正常対照およびKCASP1Tg皮疹部皮膚から行いアトピー性皮膚炎発症条件における遺伝子の発現プロフィールをスクリーニングした。スクリーニングにより、ADモデル皮膚での発現強度が対照皮膚の4倍以上の遺伝子が39個得られた。さらに、10倍以上の発現強度のものおよび4倍以上10倍以下のもの10数個がえられた。発現強度10倍以上の遺伝子は1つを除いてほとんどがhousekeeping geneであり除外した。発現強度4倍以上10倍以下のもの10数個には皮膚炎症に関連する可能性のある遺伝子が数個含まれており、これらをアトピー性皮膚炎病因候補遺伝子とした。とくに強度10倍で機能的に重要と思われる1遺伝子を選んで、その配列情報に基づいてプライマー、プローブをデザインし全配列を確認した。現在、同物質の抗体を制作しKCASP1Tg皮疹部での発現を確認ならびにKCASP1Tgの皮疹発症過程における各遺伝子の発現を時系列に解析することを行っている。ならびに抗ヒトアナログ抗体の作製を行い、アトピー性皮膚炎皮膚での発現の検討を予定している。
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