研究課題/領域番号 |
15659269
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大森 哲郎 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00221135)
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研究分担者 |
六反 一仁 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10230898)
上野 修一 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教授 (80232768)
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キーワード | DNAマイクロアレイ / うつ病 / 統合失調症 / 気分障害 / RNA発現 |
研究概要 |
我々は、神経伝達・免疫・内分泌あるいはストレス応答に関連する千数百種のmRNA発現量をマイクロアレイによって一括定量する画期的な方法を確立した。必要なサンプルはわずか2.5mlの血液であり、定量精度は従来のマイクロアレイ法をはるかに上回る。本研究は、このマイクロアレイを用いて罹患時に対照群に比較して発現の増減が認められ、その変化が回復後にも持続しているmRNA群を探索するものである。このようなmRNA群は素因あるいは発症準備状態に関連している可能性がある。従来の素因研究とは異なった観点から、精神疾患の素因あるいは発症準備性にアプローチすることを可能とする新たな研究戦略である。これまでに気分障害約30例、統合失調症約10例、不安障害約20例について、治療前と回復後のサンプルを得て、順次マイクロアレイ解析を終了している。研究期間内には、うつ病の解析が最も進み、治療前に全例にほぼ共通して有意に発現量が変化している遺伝子約20種が見つかった。また、クラスター解析から、うつ病の半数では変化するが残る半数では変化しない遺伝子群も約50種存在した。これらの変化は、健常者のストレス負荷時の所見や統合失調症の所見とは異なっていた。以上の所見は、mRNAの発現パターンが、うつ病の診断や治療の評価方法としてきわめて有用なことを示唆している。これらのうつ病における所見のうち、うつ病の半数で発現量の変化する遺伝子群は治療後に正常化するのに対し、全例に共通して発現量の変化する遺伝子の多くは治療後にも変化が見られなかった。したがって、後者の変化は素因と関連する可能性が示唆された。現在論文を準備している。またうつ病以外の精神疾患に関しても予備的なデータを得ている。マイクロアレイ法で発現量の変動している遺伝子群に注目して、素因解明につなげてゆく手法は、先駆的な報告が始まったばかりである。本研究によって神経伝達・免疫・内分泌あるいはストレス応答に関連する遺伝子に着目する我々の方法の有効性が実証された。
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