本研究の目的は、知覚運動ゲイティング(感覚刺激のフィルター機構)の障害を検出する検査である、プレパルス抑制検査を用いて、統合失調症の病態の解明と診断法の開発を行うことである。特に、1)わが国の統合失調症患者を対象にプレパルス抑制検査を施行し、健常対照群と比較して知覚運動のフィルター機構が障害されているか否かについて明らかにし、さらに、2)この検査所見と病型、家族歴の有無、経過などの臨床的所見との間に関係があるか否かについて検証することである。3)また、統合失調症のモデル動物を用いてプレパルス抑制検査を行い、モデル動物としての有用性を検証することである。 本年度は、本研究は臨床研究が中心であることから、患者および健常者に施行する際の説明文書と同意文書とを作成し、国立精神・神経センターの倫理審査委員会において承認を受けた。その後、国産のヒトプレパルス抑制テスト装置を試験的に作成し(現段階では商品化されていない)、およそ10名の健常者に施行し、装置の改良、解析プログラムの改良を行った。さらに、患者に施行する際にはできるだけ感度が高く、且つ、短時間でテストが終了することが重要であることから、テスト施行時の最適パラメータ(プレパルス音量の大きさ、プレパルスとパルスの間隔、刺激回数、順序など)の決定などの基礎的作業を行っている。また、マウスに関しては、ストレス環境下での飼育と豊かな環境下での飼育をそれぞれ統合失調症発症モデルマウス、同予防モデルとして、プレパルス抑制テストを施行し、装置の改良とパラメータの最適化を行った。これによって、ヒト・マウスのプレパルス抑制テストの施行法について習熟したため、次年度は患者と健常者との比較、統合失調症モデルマウスにおける所見について多数例での検討を行う予定である。
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