現在までに、様々なDNA多型マーカー(マイクロサテライト、SNP)を使って統合失調症との関連研究が数多く行われてきた。しかしながら、未だ有力な関連を示すDNA多型マーカーや遺伝子を同定するには至っていない。その一つの原因として、複雑な多因子疾患である統合失調症の発病や病態において、塩基配列置換以外のさらに高度なメカニズムが関与している可能性が考えられる。そして、その様なメカニズムの一つとして、DNAメチレーションによるエピジェネティクなゲノム変化の関連を考えた。もしこの様なエピジェネティクなゲノム変化が関連しているならば、従来の解析方法ではその変化を検出することはできない。そこで我々は、ゲノムDNAのメチル化パターンの違いを包括的かつ簡便に調べるために、Bisulfite処理したゲノムDNAを用いてPCRを行い、得られたPCR産物をダイレクトシーケンス法によって解析する方法を試みた。統合失調症患者16名と健常人16名のゲノムDNAを用いて、ドーパミン受容体2遺伝子のプロモーター領域について、ゲノムDNAメチル化状態を解析した。その結果、疾患と有意な関連を示すメチル化パターンは観察されなかったが、新規のメチル化部位を幾つか見出すことができた。また、この方法は飛躍的に解析時間を短縮するが、その条件設定はかなり難しいことも分かった。次年度の課題としては、PCRの反応やシーケンス反応の改善を行い、より検出感度、信頼性の高いシステムの構築を目指したいと考えている。
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