腫瘍組織や脳などの糖代謝のさかんな組織では、凍結破砕による組織ペーストのグルコース濃度は血液に比べて非常に低かった。これらの組織では血液から細胞内にグルコースが取り込まれると速やかに代謝され、細胞内のグルコース濃度は極めて低い状態で維持され、血液と細胞内の大きな濃度勾配によりグルコースが流入するものと考えられる。筋肉は、脳・腫瘍よりはグルコース濃度が高く、肝臓は更に高く、血液が最も高い。これらの関係はあたかも組織へのFDG集積の程度と反比例するかのような関係にあった。実験動物にグルコース負荷をすると、血液や筋肉のグルコース濃度が上昇し、腫瘍の上昇はそれほどでもなく、コントラストが強くなった。デオキシグルコースを投与し、糖代謝を阻害すると、腫瘍の糖濃度は上昇し、コントラストが低下した。このように、腫瘍および筋肉、その他の組織のグルコース濃度の特性がある程度理解できるようになった。しかし、近赤外光による測定では、グルコース濃度がゼロに近い腫瘍と、5-10mg/dl程度のバックグラウンドを、ex vivoにおいても、in vivoにおいても確実に検出するのは現状では極めて困難であった。本法による癌の診断のためには、光学的ないし工学的に測定装置自体の精度の飛躍的な向上が必須であると言うことが判明した。
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