研究概要 |
腎臓刷子縁膜酵素でペプチドから遊離されるRe化合物として,[^<186>Re]CpTR-Glyを考案し、合成した.本化合物の安定性,タンパク結合,生体内代謝を検討した.また,[^<186>Re]CpTR-GlyにN^ε-Boc-L-Lysineが結合した[^<188>Re]CpTR-Gly-Lys(Boc)OHを合成し,ラット腎臓刷子縁膜小胞(BBMV)とインキュベートして,[^<186>Re]CpTR-Glyの生成を分析した. [^<186>Re]CpTR-Glyは,緩衝液中や血漿中で安定に存在した.血漿タンパク質との結合も観察されなかった.マウスに投与した場合,[^<186>Re]CpTR-COOHは体内から速やかに尿排泄され,尿中には未変化体の他にグリシン抱合体を含む複数の水溶性代謝物が存在した.一方,[^<186>Re]CpTR-Glyは投与後速やかに未変化体として尿中に排泄された.以上より,[^<186>Re]CpTR-Glyは生体内において,その構造を維持したままヨード馬尿酸と類似した体内動態を示し,刷子縁膜酵素により母体ペプチドから遊離される尿排泄性Re化合物に必要な条件を満たすと考えられる.[^<186>Re]CpTR-Gly-Lys(Boc)-OHをBBMVとインキュベートしたところ,CpTR-Glyの生成が認められた.さらに,carboxypeptidase Mの活性化剤Co^<2+>の添加でCpTR-Gly生成が増加し,阻害剤MGTAの添加で抑制された.以上より,[^<186/188>Re]CpTR-Gly-Lys(Boc)-OHはcarboxypeptidase Mにより[^<186/188>Re]CpTR-Glyを遊離することが示唆され,CpTR-Gly-LysのLysineのN^εアミノ基にペプチドとの結合部位を導入する標識薬剤は,^<186/188>Re標識ペプチドの腎臓への放射能滞留の解消に有用と考えられる.
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