固形腫瘍では通常血管の分布が乏しい。このような低酸素状態は、腫瘍の放射線治療の効果に対して重要な影響を与えるので、腫瘍の治療前には組織内が低酸素状態かどうかを知ることは適切な治療法の選択に非常に重要である。しかし、臨床の場で使える非侵襲酸素濃度測定法は皆無である、という現状である。 そこで、広く臨床応用が可能で実用的な腫瘍内酸素濃度測定法を開発し、ガン細胞の生物学的特性や腫瘍細胞に応じた放射線治療を実現させることを目指している。本研究では、ヒトの腫瘍内酸素濃度を非侵襲的に測定することが可能な臨床用ESRオキシメトリー法を開発し、その測定結果をガン患者の治療法の選択に活用するとともに、放射線治療に役立てる事を最終目標としている。今年度は以下の2点について検討を行った。 1.非侵襲酸素濃度測定システムの設計:動物実験やヒト舌癌などの固形腫瘍などを対象とし、被測定物の大きさに依存しないサーフェスコイルを利用したin vivo ESRシステムをほぼ完成させることができた。基本的なコンポーネントは既に稼働していたので、今年度は装置のマイクロ波回路や回路定数を実験で確認しながら決定した。ESRオキシメトリー法で高精度に酸素濃度を測定するには、磁石の磁場捜引精度が重要で、磁場強度を高精度で制御するための高精度電源を購入し磁場コントロール用プログラムを製作した。現在、磁場の安定スイープの実験中である。 2.酸素濃度感受性プローベの合成:平成15年度は、糖類や墨な度を酸素濃度測定プローベとして実験を行った。グルコースの炭化・賦活化して、プローベと共存する酸素濃度に依存したESRスペクトルの変化が観測可能なプローベの合成を試み、安定に合成できるプロトコールを完成させた。
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