研究概要 |
核医学検査や核磁気共鳴による検査でしか得られなかった生体の機能情報をX線検査で得ようとする新たな分子イメージングのための薬剤開発を目的とし、安定同位体元素を高感度に検出できる放射光X線検査である蛍光X線CTを念頭に置いて、非生体構成元素(ヘテロ元素)導入型人工アミノ酸化合物の開発に着手した。その手始めとして本年度は、キャピラリ状ファントムに4-Br-L-phenylalanine (Br-Phe)水溶液を測定試料として満たし、濃度及び空間分解能に関する予備的検討を行なった。 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 放射光研究施設(BL-15B1、3GeV運転)において、BrのK吸収端(13.4keV)よりやや高い17keVの放射光(単色、ビームサイズ縦1mm、横1.2mm)により実験を行った。X線撮影系は偏向電磁石部とそこから放射された連続波長のX線を単色にするシリコン単結晶分光器で構成した。Br-Phe水溶液(1,2,3,4,5mM)を約1mmφのガラス管に満たし、塩化ビニルの板に2〜3mm間隔で固定しファントムとした。100秒測定、ビームが試料を満たしたキャピラリを垂直に横切るようにファントムを0.2mmづつ移動し水平走査した。その結果、空間分解能は1mm以下、濃度分解能は0.1mM以下であった。装置の改良に関して、散乱線を除去し、バックグラウンドの影響を下げるためにSSDに入射するX線をコリメートすること、今後ビームサイズを小さくし更に空間分解能を上げること、さらに、ファントム自体を水中に入れて測定するなど人体の構造を考慮したファントムを作製する必要が考えられた。薬剤は人の体内では0〜1mMの濃度で分布するので、その領域での分解能を評価したうえで、今後マウスなどの実験動物に薬剤を投与して蛍光を測定する。
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