腫瘍の増殖、転移には血管新生が必須である。従来、血管新生は既存血管から成熟細胞により新たな血管枝が形成(angiogenesis)されるものと考えられていたが、近年、成体内の流血中に骨髄由来の血管前駆細胞が存在し、血管に分化(vasculogenesis)しうることが発見され、腫瘍血管新生への骨髄由来血管前駆細胞の関与が注目されている。 LacZマウスの骨髄で骨髄を置換した野生型マウスに癌を接種し、癌を増殖させた。採取した癌を抗CD31抗体および抗LacZ抗体にて免疫蛍光二重染色し、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。新生腫瘍血管内皮がCD31により染色されるが、そのうちLacZにも染色されるものが認められた。すなわち、新生腫瘍血管内皮細胞中には骨髄細胞由来のものがみられた。この結果は骨髄由来血管前駆細胞が腫瘍血管新生に関与していることを直接証明している。 骨髄に直接作用する造血系サイトカインG-CSFは末梢血中の骨髄幹細胞を増加させることが知られている。そこで、G-CSFを投与しているマウスに癌を接種したところ、コントロール群と比較して腫瘍増殖、腫瘍血管新生とも促進された。またin vitroにおいてG-CSFには腫瘍細胞増殖に影響を与えなかった。この結果はG-CSFには腫瘍細胞を増殖させる直接作用はないが、骨髄より血管前駆細胞を動員させることにより、腫瘍血管新生ひいては腫瘍増殖を促進させることを示唆しており、腫瘍血管新生における骨髄由来血管前駆細胞の重要性を示している。
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