研究概要 |
PDX1はβ細胞においてinsulin,GLUT2など血糖維持に重要な遺伝子群の転写調節を行なうhomeobox型転写因子である。これまでに外分泌細胞特異的pdx1ノックアウトマウスで外分泌細胞のapoptosisを来す事を明らかにした。他の報告ではβ細胞特異的にpdx1をノックアウトしても同細胞のapoptosisを来すことが知られている。以上の結果から、PDX1は膵細胞の生存にかかわる重要な遺伝子の転写調節因子である可能性があると考え、その新規PDX1ターゲット遺伝子を同定する目的で本研究を開始した。 DNA micro arrayを用いたcandidate gene approachで実験を行なうべく、CMV promoter下にpdx1を発現させるアデノウイルスを作成し、pdx1ノックアウトマウスの膵原基に感染させたが、そもそも組織の増殖が非常に悪く、組織培養の過程で充分なRNAがとれず、DNA chipの実験までは到達できなかった。 そこで現在、Cre-ERを用いてinducibleに外分泌特異的にpdx1をノックアウトできるマウスを用いて直接組織からRNAを採取し、DNA chipにかける実験に変更して交配を進めている。当初の目的であった新規PDX1ターゲット遺伝子の同定は残念ながらこの研究期間内には達成できなかったが、現在進行している方法で最終的には目標達成可能と思われる。 ー方、pdx1ノックアウトマウスの生後の解析を加えた結果、新たな事実が判明した。同マウスでは十二指腸上皮は一旦分化するものの、胎生18.5日頃よりapoptosisに陥り、生後どんどん脱落してゆく。つまり、膵細胞のみならず、十二指腸上皮細胞においてもpdx1によるsurvival signalsが存在し、その重要性は発生過程の時期によっても違ってくるという事である。本研究の継続にあたり、非常に重要な知見と言える。
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