研究概要 |
【背景】1993年以降,各種遺伝子欠損マウスに慢性腸炎が自然発症することが報告され,IBDモデルとして研究に用いられている.その一つであるIL-2 receptor γ chain欠損マウスはγchainを欠損し,このサブユニットはIL-4,IL-7,IL-9,IL-15と共通しているため同時にこれらILのレセプター機能も消失もしくは不十分となる(Disanto JP et al.Immunology 92,1995).このマウスはNK細胞の消失,T, B細胞の減少,胸腺や末梢リンパ組織の著明な低形成,パイエル板の消失,脾腫などを特徴としさらに生後8週頃より炎症性腸疾患類似の大腸炎を併発する.この大腸炎発症のメカニズムは不明であり今後の検討が待たれるところである. 【目的】Common cytokine receptor γ chain deficient mouseにおける大腸炎発症の病態をサイトカインを中心とした免疫学的解析にて明かにする. 【対象・方法】γc-/Yマウスを用い,1.組織学的検討,2.大腸Lamina propria lymphocyte(C-LPL)におけるcell populationの解析,3.C-LPLにおけるTCRV β repertoireの解析,4.細胞内サイトカインFACSによるサイトカイン産生の解析,5.ELISA法によるサイトカイン産生の解析を行った. 【結果】1.IBD発症マウスでは肉眼的には脱肛・大腸の浮腫及び内腔の狭小化,病理組織学的にはcrypt depthの伸長,Goblet cellの減少,粘膜下層における炎症性細胞浸潤など大腸炎に特徴的な所見が認められた.2.C-LPLにおけるcell populationの解析では著明なCD4+T cellの増加を認めた.3.FACSによるTCR V β repertoireの解析ではへは著、IBD発症マウスでVβ14の比率が著明に高くなっていた.4.C-LPLにおけるサイトカイン産生ではIL-6のspontaneousな産生を認めた.5.細胞内サイトカインFACSではCD4+T cellのIL-6産生を認めた. 【考察】TCRV β 14など限られたusageを示すCD4+T cellがTh2系サイトカインとくにIL-6に依存したヘルパー活性を示しIBDの病態形成に深く関わっていることが示唆された.
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