研究課題/領域番号 |
15659312
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 誠二 京都大学, 医学研究科, 助手 (00303834)
|
研究分担者 |
山本 雄造 秋田大学, 医学部, 教授 (70281730)
嶌原 康行 京都大学, 医学研究科, 助教授 (30196498)
波多野 悦朗 京都大学, 医学研究科, 助手 (80359801)
|
キーワード | 肝微小循環 / Y-27632 / 肝虚血再灌流障害 / 生体蛍光顕微鏡 |
研究概要 |
低分子量GTP蛋白であるRhoは、ROCKなどの下流エフェクターを活性化することで、様々なシグナル伝達の分子スイッチとして働いている。近年、合成化合物であるY-27632が、ROCK/Rho kinaseの選択的阻害薬であることが報告された。我々は、Y-27632がアクチン・ミオシン依存性の平滑筋収縮を抑制すること、更にインテグリンを介する細胞接着を抑制することに着目し、70%・90分・部分肝虚血再灌流障害モデルに対し、Y-27632による障害抑制効果を検討した。肝微小循環は、生体蛍光顕微鏡を用いて、in vivoのまま、客観的に、微細な経時的変化を検討した。まず、肝虚血灌流障害モデルにおいて再灌流後2時間の検討を行い、再灌流早期の微小循環障害として、類洞灌流の低下と肝微小脈管(肝類洞及び中心静脈)の狭小化を示した。更に、再灌流後期相の障害として、白血球・血管内皮相互作用の亢進を示した。一方、Y-27632を治療として用いるための投与タイミングと至的投与量を決定すべく実験を行い、最終的に1mg/kg体重・虚血前投与が最も有効であるとの結論を得、この投与方法で上記の虚血後肝微小循環障害を包括的に抑制できることを証明した。その結果・肝逸脱酵素値の軽減や、病理組織学的な障害抑制といった、肝細胞障害を有意に軽減することを示した。以上の結果は、選択的ROCK阻害薬Y-27632が肝虚血再灌流障害モデルに対し保護効果を持つことを、特に微小循環の側面から証明したものであり、ROCK/Rhoシグナル伝達系が、新たな治療ターゲットとなりうる可能性を示したものである。今後は引き続き、障害抑制メカニズムの解明を、生化学的手法を用いて行っていく予定である。
|