発現プロテオミクスに基づいた肝癌再発予測システムの開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15659315
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 岡 正朗 山口大学, 医学部, 教授 (70144946)
• 研究分担者: 中村 和行 山口大学, 医学部, 教授 (90107748) ; 飯塚 徳男 山口大学, 医学部, 寄附講座教員 (80332807)
• キーワード: 肝細胞癌 / プロテオミクス / heat shock protein / 再発予測

研究概要

本研究に際し、平成15年度には肝癌のトランスクリプトーム解析およびデータベースを充実させた(Lancet 2003,361:923-9;Oncogene 2003,22:3007-14;FEBS Lett. 2003,555:583-90.)。これら一連のデータは我々のURL(http://surgery2.med.yamaguchi-u.ac.jp/reseatch/DNAchip/hcc-recurrence/index.html)で公開し、現在でも多くの研究者からのアクセスがあり活用されている。
このトランスクリプトーム研究と平行して、本申請により得られた研究費に基づき2次元電気泳動(2-DE)によるプロテオーム解析を行った。まずC型肝炎ウイルス(HCV)に起因する肝癌で発現異常を示す複数のタンパクスポットを得た。興味深いことに、これらのスポットに対する質量分析解析を行ったところ、同定された4タンパクは全てheat shock protein 70(HSP70)ファミリーであり、Proteomics(2003,3:2487-93)に報告した。これら4タンパクはいずれもHCV関連肝癌で発現が亢進しており、この中でもHSP70.1は我々のトランスクリプトーム解析の結果(Cancer Res.2002,62:3939-44)と一致していた。また、同様に癌部で発現低下した多くのタンパクをも同定した(Proteomics in press)。
現在、肝癌30例に対し、プロテオーム解析を終了している。再発予測システムを構築するために、この30例をトレーニングサンプル(20例)とブラインドサンプル(10例)に分けた。まずトレーニングサンプルのデータを用いて、非癌部肝臓と比較して発現異常を示す上記タンパクを用いて、Fisher linear classifierによる再発予測システムを構築した。このシステムのブラインドサンプルにおける予測能力を検討したが、十分な予測性能を引き出すことはできなかった。そこで、本申請で記載したように『教師あり学習理論』に基づく『特徴選択』を行い、再発に関わるタンパクスポットを複数同定し、現在、予測システムを構築中である。同時に、これらのスポットがどのようなタンパクなのか質量分析解析を用いて解明中である。

研究成果

• [文献書誌] Takashima M, Iizuka N, Oka M, Nakamura K, et al.: "Identification of the heat shock protein 70 family as biomarkers against hepatitisC_virus-infected_hepatocellular_carcinoma by proteomic profiling"Proteomics. 3(12). 2487-2493 (2003)
• [文献書誌] Okada T, Oka M, Iizuka N, et al.: "Gene expression profile linked to p53 status in hepatitis C virus-related hepatocellular carcinoma"FEBS Lett. 555(3). 583-590 (2003)
• [文献書誌] Iizuka N, Oka M, et al.: "Identification of common or district genes related to antitumor activities of_a_medical_herb_and_its_major_component_by_oligonucleotide microarray."Int J Cancer. 146(1). 666-672 (2003)
• [文献書誌] Iizuka N, Oka M, et al.: "Use of oligonucleotide microarray as a novel approach for prediction of early intrahepatic recurrence in hepatocellular carcinoma after curative resection."Lancet. 361(9361). 923-929 (2003)
• [文献書誌] Iizuka N, Oka M, et al.: "Differential Gene Expression in Distinct Virologic Types of Hepatocellular Carcinoma : Association with Liver Cirrhosis"Oncogene. 22. 3007-3014 (2003)
• [文献書誌] Iizuka N, Oka M, et al.: "Nm23-H2 protein expression and telomerase activity in hepatocellular carcinoma"Anticancer Res. 23(1A). 3007-3014 (2003)