異種移植片に対するアコモデーション誘導遺伝子導入による生着延長効果の検討

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15659319
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (90323104)
• 研究分担者: 田畑 俊治 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (40361191) ; 近藤 丘 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (10195901) ; 松村 輔二 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (80281997) ; 佐藤 雅美 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (30250830)
• キーワード: 異種移植 / アコモデーション / マイクロアレー / アポトーシス

研究概要

体重100gのハムスターから体重250gのラットへの左同所性肺移植を施行した。免疫抑制剤の投与方法により肺移植群ではコブラ毒+シクロスポリン投与群(16移植:32匹使用)、FK506+サイクロファスファミド投与群(12移植:24匹使用)、免疫抑制剤非投与群(8移植:16匹使用)の3群に分け、移植直後、2日目、14日目、21日目に犠牲死させ、各移植片を摘出した。測定項目は移植片の生着率、病理所見、cDNA microarray法を用いた遺伝子発現の解析を行った。
免疫抑制剤非投与群では移植片は移植後2〜4日目に全て拒絶された。一方、コブラ毒+シクロスポリン投与群では16葉中7葉が移植後21日間拒絶されることなく生着した。また、FK506+シクロフォスファミド投与群では12葉中5葉に21日間の生着が認められた。病理所見の比較において免疫抑制剤非投与群では移植後2〜4日ですべて拒絶され、内出血ならびにTUNEL陽性細胞が多数認められた。一方、コブラ毒+シクロスポリン投与群では、移植直後同様、ほぼ正常でTUNEL陽性細胞も認められなかった。また、FK506+サイクロファスファミド投与群でもコブラ毒+シクロスポリン投与群と同様な結果であった。免疫抑制剤投与群のなかで拒絶されなかった肺移植片を材料とし、cDNA microarrayを用いて解析された遺伝子発現パターンの経時的変化の検討では,移植後21日目に比較して移植後2日目に発現亢進している遺伝子群が多かった。また、2つの免疫抑制剤投与群の比較では遺伝子発現パターンに相違を認めた。
激烈な拒絶反応を誘発する異種移植であっても長期生存が可能な免疫抑制剤の組み合わせが存在することがわかった。また、拒絶反応を起こした移植片では移植後2日目にアポトーシスが認められた。一方、長期生着が期待される免疫抑制剤が投与された群では、移植後21日目に比較して移植後2日目に発現亢進している遺伝子群が多かった。このことは、移植後早期に拒絶反応から移植片を保護する特定の遺伝子の発現(例えば、アポトーシス抑制遺伝子)が亢進し、それらによってアコモデーションが誘導されている可能性が考えられた。また、免疫抑制剤の種類によって変化する可能性も示唆された。今後、発現亢進した遺伝子の解析をすすめる予定である。

研究成果

• [文献書誌] Oyaizu T, Okada Y, et al.: "Reduction of recipient macrophages by gadolinium chloride prevents development of obliterative airway disease in a rat model of heterotopic tracheal transplantation."Transplantation. 76. 1214-1220 (2003)
• [文献書誌] 岡田克典, 近藤 丘: "肺移植の適応とレシピエント選択基準"日本臨床. 61. 2205-2211 (2003)
• [文献書誌] 岡田克典, 近藤 丘: "COPDと肺移植"診断と治療. 91. 2255-2259 (2003)
• [文献書誌] 岡田克典, 近藤 丘: "特発性間質性肺炎の臨床-肺移植-"日本胸部臨床. 62巻増刊. 121-127 (2003)
• [文献書誌] 岡田克典, 近藤 丘: "小児の心臓・肺移植(松田 暉編)"日本医学館. 121 (2003)
• [文献書誌] 岡田克典, 近藤 丘: "胸部移植プロトコール集(北村惣一郎, 黒澤博身, 近藤 丘, 清水信義, 松田 暉, 和田 洋 巳編)"メディカルビュー社. 96 (2003)
• [文献書誌] 岡田克典, 近藤 丘: "臨床呼吸器外科-第2版-(渡邊洋宇, 藤村重文, 加藤治文編)"医学書院. 539 (2003)
• [文献書誌] 岡田克典, 海津慶子, 近藤 丘: "臓器移植ナーシング(添田英津子編)"学習研究社. 195 (2003)