脳卒中は依然として死亡原因の上位を占め、脳卒中に対する遺伝子解析とその予防は医療の中でも重要な課題と思われる。ヒト脳卒中の原因血管病変のうち動脈硬化性病変については分子生物学的解析が行われているものの、出血性脳卒中の主要原因である脳動脈瘤を始めとした脳血管奇形についての細胞分子生物学的機構の解明はほとんど行われておらず、発生に関わる遺伝子の解析は全く行われていない。本研究では、脳動脈瘤の発生・増大に関与する可能性のある遺伝子群について、微量組織レベルにおける遺伝子発現、蛋白発現を経時的に検討し、脳動脈瘤の発生における原因遺伝子の探索を行うことを目的とする。当該研究者の橋本らにより開発されたラット脳動脈瘤モデルを用いて、脳動脈瘤形成過程における関連遺伝子の発現を、遺伝子改変マウスにおいて遺伝子操作による脳動脈瘤の形成変化を検討している。現在候補遺伝子につき特にAtac-PCRを用いて検索中である。現在までに、特にiNOSの発現亢進、ETBRの遺伝子、蛋白レベルでの発現変化、細胞接着因子の発現変化につき検討を加え、iNOSによる脳動脈瘤の増大の可能性につき発表してきた。また、ETBRの発現変化、細胞接着因子の発現変化と脳動脈瘤との関係につき論文作成中である。今後、ヒトの脳動脈瘤における遺伝子発現についても解析を加え、これらの因子を制御することによる脳動脈瘤の非手術的治療の開発の可能性につき検討する予定である。
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