研究課題
平成16年度は、内在性神経幹細胞の活性化とその修飾因子について研究した。まず、成熟個体以上に神経幹細胞からの神経新生が活発と思われる新生児ラットを用い、虚血性障害の後の細胞分裂、移動、分化について調べた。すると、多くの細胞が神経幹細胞の存在するsubventricular zoneにおいて新たに産生され、障害部位に移動していることが確認された。また、細胞マーカーの免疫組織染色を通じ、新たに産生された細胞が神経系構成細胞に分化しているかどうかを確認したところ、神経前駆細胞にまでは多くの細胞が分化していることが確認された。しかし、成熟神経細胞にまで分化している細胞はわずかであり、多くの細胞は成熟神経細胞になる以前に消失していることが確認された。このことは、神経幹細胞を用いた虚血性脳障害の治療のためには、新たに産生された細胞が脳内にて神経細胞にまで成熟するような条件をととのえることが重要であることを示唆している。また、グリア系細胞への分化も細胞マーカーを用いて調べたところ、多くの細胞がグリア系細胞にも分化していることが確認された。一方、脳の機能回復のためには神経の軸索伸長やシナプス形成が重要であるが、その抑制因子であるニューロカンの発現変化を局所虚血後脳にて検索したところ、脳梗塞周辺部位にて発現が増加していることが免疫組織学的およびウエスタンブロットから判明した。本物質の発現の制御が障害後脳の機能回復のためには重要であることが示唆された。これらの研究より、本年度の当初目標は達成されたものと考えられる。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism (in press)
Brain Research (in press)
Stroke (in press)
Journal of Neuroscience Research 76(3)
ページ: 383-389