研究概要 |
ゼラチン処理したプレートにESQ feeder細胞を播種し培養した。1日後、mouse ES細胞を1x10^6cells/dishとなるようにfeeder細胞上に播種し、ES細胞を増殖させた。3日毎に、継代培養してES細胞を増殖させた。増殖させたES細胞をI型コラーゲンチューブに包埋し、一部はin vitroで培養し、残りはSCIDマウスの坐骨神経に作った欠損部に移植した(in vivoでの細胞の分化を観察)。しかし、in vitroの群を観察したところ、細胞密度や形態に大きなばらつきがあった。また、in vivoの神経欠損部移植群も移植後1-2週では局所の組織形態は様々で一定の傾向を示さなかった。一方、長期間経過すると、母床の細胞侵入が著しく、移植片の運命や影響を十分に観察することは困難であった。 よって、本実験から有効な神経誘導方法を確立するにはES細胞の増殖方法を厳格に標準化しなければならないことが明らかになった。細胞準備が安定しない原因を調査するために、各処理段階を精査したところ、トリプシン・EDTA処理によってfeeder細胞の除外率やES細胞の回収率・生細胞率などに大きくばらつきがあることが判明した。 そこで、同処理を一定にするための様々な試みを行い、比較的安定した手技を確立することができた。さらに、サンプル数は限られているものの、安定した細胞を使って坐骨神経に移植した組織を組織学的に観察した。形態学的には、初期の結果よりも安定した結果を残していることを確認した。また、移植後長期経つと再生軸索を認めた。定量的観察には至っていないが、今後は再生組織のmRNA(betaNGF、retinoic acid, etc.)分析を行う予定である。そして、対照群も作製し、ES細胞による神経再生の可能性を検討したい。
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