研究概要 |
脊髄損傷による四肢麻痺は、脊髄外傷や大血管手術後のみならず、まれだが麻酔中や痛みの治療後にも発生している。さまざまな予防的処置や治療がなされているものの、一旦脊髄損傷(下肢麻痺)が生じるとそれからの快復は極めて難しい。しかしこの数年間の神経科学の進歩は、脊髄のニューロンや軸索の再生の知見も集積し、損傷脊髄の再生(四肢麻痺の治療)の可能性もみえてきた。(Bulsara KR et al.Spine,2002;Wickekgren I.Science,2002) 初年度の研究計画は、ラットの脊髄損傷モデルを作成し、損傷脊髄におけるNa^+-K^+ATPase(Na^+ポンプ;Na^+3個とK^+2個を細胞外内に移動させ、細胞膜を介するelectrochemical gradientを維持)の役割を検討する予定であったが、大学の移転などで予定通り進んではない。しかし、局所麻酔薬、テトラカインのアポトーシスに影響を観察し、テトラカインは濃度依存性にPC-12細胞のアポトーシスを誘導し、重要な細胞膜関連のシグナル誘導酵素であるphospholipase D(PLD)が、DGやPKCの活性を介して細胞をアポトーシスから守ることなどを明らかとし、PLDの活性が細胞の再生にも影響している可能性示唆する結果を得ている。現在論文を誌筆中である。
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