バージャー病で、Fontaine分類IV度の患者で、安静時疼痛、および虚血性潰瘍・壊死を持ち、外科的血行再建術の適応なく、抗血小板薬、血管拡張薬、交感神経ブロックなどの治療でも著しくQOLが阻害され、将来肢指切断が予想される難治性患者に対し、骨髄細胞移植で発生する合併症、効能、不利益、利益を説明し、患者自らの意志にて細胞移植医療を希望した患者を対象に骨髄細胞移植を行った。術前にサーモグラフィー測定、血管造影、ABI測定を行った。 手術室クリーンルームにて硬膜外カテーテルを留置した。この硬膜外カテーテルは、骨髄細胞を下肢筋肉に移植(注射)する際の疼痛管理のための麻酔および術後疼痛管理に使用した。術後の疼痛管理は、持続硬膜外カテーテルより0.25%ブピバカインの持続投与を行い、鎮痛を得た。これまでの報告によると、骨髄移植後2〜3日間、足指の骨髄細胞注射部位の疼痛が強いため、適切な鎮痛対策が必要である。今回下肢の移植後疼痛に対しては、硬膜外からの局所麻酔薬の投与が有効であった。来年度には、新生血管が発生していると考えられるので、硬膜外ブロックによる交感神経抑制による血流変化を検討できると思われる。また、上肢に対しても、前腕に骨髄細胞移植を行った。術前に星状神経節ブロックによる皮膚温の変化を記録した。今後、移植後の上肢の新生血管に対する交感神経支配を星状神経節ブロックによる反応を記録することにより検討できる。新生血管に対する交感神経支配が存在するとしたら、移植後の神経ブロックが治療の一選択となりうる。
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