バージャー病で、Fontaine分類IV度の患者で、安静時疼痛、および虚血性潰瘍・壊死を持ち、外科的血行再建術の適応なく、抗血小板薬、血管拡張薬、交感神経ブロックなどの治療でも著しくQOLが阻害され、将来肢指切断が予想される難治性患者に対し、骨髄細胞移植で発生する合併症、効能、不利益、利益を説明し、患者自らの意志にて細胞移植医療を希望した患者を対象に骨髄細胞移植を行った。術前にサーモグラフィー測定、血管造影、ABI測定を行った。細胞移植は、下肢および上肢(前腕)に行った。星状神経節ブロックによる皮膚音の変化を細胞移植前後で測定した。細胞移植後一ヶ月以上経過した時点で移植部位の皮膚温は、星状神経節ブロックにより上昇した。このことは、移植部位の交感神経支配が出現している可能性を示唆している。しかし、移植前より存在する血管がブロックによって拡張し血流が増加したため、新生血管が血流により続発的に拡張した可能性もあるので、新生血管に新たな交感神経支配が出現したとは即断できない。 骨髄単核細胞移植後は疼痛が強い。本療法の対象患者は、ASOやバージャー病のため、壊疽があり、術前から疼痛が強く、消炎鎮痛剤では十分鎮痛が得られていない患者が多かった。こうした痛みに対し、術前から、ブプレノルフィンや塩酸モルヒネを投与すると鎮痛が得られた。移植直後の痛みに対しても、モルヒネやフェンタニルの使用により鎮痛をえることができた。細胞移植後の急性期を過ぎると、オピオイドの使用量は術前に比し減少した。抗血小板薬を服用している患者が多いため、硬膜外カテーテルを留置できる患者は少なかった。
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