年度はラットの初代培養肝細胞における肝不全モデルを作成し、活性酸素種(ROS)産生剤の肝細胞アポトーシスに及ぼす影響を検討した。 方法 1.肝細胞傷害モデルの作成:まず、ラットの肝臓にコラゲナーゼを灌流し、肝細胞を分離精製しインスリンを加えてインキュベータ内で2時間培養した。次いで、敗血症ショックにおける肝不全を想定して、培地に腫瘍壊死因子(TNFα)と抗がん剤であるアクチノマイシンD(ActD)を加え細胞傷害を惹起し16時間培養した。細胞内ROS産生剤である6-フォルミルプテリン(6FP)を培地に加え、これらの薬剤が肝細胞アポトーシスならびに細胞内還元型グルタテオン(GSH)含量に及ぼす影響を検討した。 2.培養細胞における細胞傷害の評価:まず、培養液中の肝細胞逸脱酵素を測定した後、培地にMTT(正常細胞に取り込まれて発色する)を加えてマイクロプレートリーダを用いで測定し、生存細胞をを定量した。次いで、アポトーシスの評価するため、培養細胞を回収し、蛍光色素ヨウ化プロピジウム(PI)を加えた後、フローサイトメータを用いてDNA断片化を定量的に評価した。回収した培養細胞の抽出液のアポトーシス関連酵素の活性を蛍光マィクロプレートリーダを用いて測定し評価した。 3.細胞内還元型グルタチオン(GSH)の定量 培養細胞を剥離回収したのち細胞質を抽出し、細胞内のGSHの含量をキットを用いて測定した。 結果 TNFαとActDによって肝逸脱酵素は上昇し、生存細胞は減少した。また、DNA断片化は亢進しアポトーシス関連酵素の活性は上昇した。6FPの投与により、肝逸脱酵素の上昇ならびに生存細胞の減少は抑制さた。DNA断片化ならびにアポトーシス関連酵素活性の上昇も抑制された。6FP投与により、細胞内GSが減少した、以上より、6FPはTNFαとActDによって誘発される肝細胞のアポトーシスを抑制することにより肝細胞傷害を緩和することが明らかとなった。アポトーシス関連酵素活性の上昇には、GSHが必要なので、6FPは細胞内GSHを減少させることによりアポトーシスを抑制したと考えられた。
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