研究課題
三叉神経支配領域の疼痛に対する対策は麻酔科領域の重要課題である。三叉神経支配領域から三叉神経半月神経節細胞体を介して脳幹内へ入った痛覚神経情報は、橋から尾側へ伸び脊髄へ至る三叉神経脊髄路核において処理されるが、これら神経情報処理機構の詳細は未解明である。そこで、三叉神経からの求心性神経情報の脳幹内神経回路網における処理様式を詳細に解明するため、膜電位イメージング法をラット脳幹・脊髄(スライス、ブロック)標本に応用し、脳幹・脊髄内における三叉神経関連の神経興奮伝播様式を動画像として解析し、さらにその神経興奮伝播に対する各種薬剤の修飾効果を検討するための実験を行った。エーテルによる深麻酔下で幼若ラットから脳幹・脊髄を摘出し、脳幹スライス標本、脳幹・脊髄ブロック標本、脊髄スライス標本を作成した。標本脳幹部には橋、延髄、頚髄、両側三叉神経根をそれぞれ含めたものを作成した。標本を膜電位感受性色素で染色後、正立蛍光顕微鏡下チェンバー内で観察面を上にして置き、酸素化人工脳脊髄液で灌流・維持した。標本への化学刺激(二酸化炭素負荷等)、電気刺激(吸引電極による三叉神経各枝の刺激等)を行った際の標本観察面における神経応答(膜電位応答)を高速高感度光計測システムで動画像として記録した。次いで、これら神経応答に対する各種麻酔関連薬剤の作用も観察した。その結果、局所麻酔薬は、痛覚神経回路網においてシナプス伝達に対して強い遮断作用を示すことを見出した。今後は、尾側延髄において三叉神経脊髄路尾側亜核の腹内側に存在し,三叉神経を介する痛覚神経情報と触覚神経情報とを処理するとされる延髄外側網様体にも着目し、未解明の重要課題である三叉神経脊髄路核と延髄外側網様体との間の結合様式について詳細な解析を行う予定である。そして、これらの成績に基づき三叉神経を介する疼痛に対する新しい薬理学的鎮痛法の開発を目指す。
すべて 2005 2004
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Neuroscience Research 55(suppl)(印刷中)
Japanese Journal of Physiology 55(suppl)(印刷中)
Neuroscience Letters 366(1)
ページ: 103-106