研究概要 |
【目的】難治性婦人科癌に対する新たな治療戦略として,我々は,CD25^+CD4^+T細胞が制御性T細胞(Regulatory T,T_R)として自己免疫反応を抑制的に制御しているという知見に着目し,ヒト末梢血単核球(PBMC)よりT_Rを除去した新しい免疫療法の有効性につきin vitroで検討した.【方法】同意のもと健常人より採取したPBMC,それよりCD25^+T細胞を除去したもの,を各々培養した.(PBMC培養群,T_R除去培養群).(1)この両群でヒト卵巣癌細胞株(3種),ヒト子宮肉腫細胞株(1種)を標的とする細胞傷害アッセイを行い比較した.(2)両群のNK/LAK細胞の割合およびその細胞障害能につき比較した.(3)IL-2がT細胞の増殖やNK/LAK細胞の機能強化を促進する事実に基づき,両群の培養上清中のIL-2濃度,細胞増殖能を比較した.(4)培養開始時にhelper T細胞除去,またhelper T細胞と抗原提示細胞との反応を阻害するべく抗MHC class II抗体添加,を行った上で2,3と同様の実験を行った.【成績】(1)T_R除去培養群ではPBMC群に比して,いずれの標的細胞に対しても有意に強い細胞傷害能が認められた.(2)(3)T_R除去培養群ではPBMC培養群に比して,NK/LAK細胞の割合が増加かつ細胞障害能が亢進し,培養上清のIL-2濃度,細胞増殖能が上昇した.(4)T_R除去培養群でもhelperT細胞の除去あるいは抗MHC class II抗体の添加により,2,3で観察された現象が観察されなくなった.【結論】T_R除去により婦人科悪性腫瘍細胞株に対する細胞傷害能を強化し得,制御性T細胞の操作による腫瘍免疫療法の可能性が示唆された.このメカニズムとして,自己反応性のhelper T細胞が自己抗原提示細胞と反応する結果IL-2分泌が亢進し,さらにこのIL-2によりNK/LAK細胞の強化をはじめとする細胞傷害能強化が惹起される可能性が考えられた.
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