目的:器官培養コルチ器へのprestin遺伝子(Pres)導入 これまでもウイルスベクターを用いた内耳への遺伝子導入は報告されている。しかしウイルスベクターを用いる方法はそれ相応の設備や機器が必要であり、手技の困難さ、実験者の感染といった危険性がある。今回検討した超音波遺伝子導入法は比較的新しい遺伝子導入方法で、手技が簡便であり感染の危険性もない。しかし報告例が少なくまだ確立した手技ではない。 方法: 1)コルチ器の器官培養:生後4-8日目のマウス(C57BL/6J)の蝸牛を用いて実験した。実体顕微鏡下に蝸牛を摘出し、骨組織、蝸牛軸、血管条を取り外し、頂回転側3分の1と、基底回転側3分の2とに切断し基底回転側を培養組織とした。 2)超音波遺伝子導入法によるprestin遺伝子の器官培養コルチ器への導入:マイクロバブルが1:2になるように調製し、ディッシュ上に滴下し、そこに取りだした組織をおき超音波照射した。 結果: 1)生後4-8日目のマウスから取り出したコルチ器に超音波遺伝子導入法を用いてprestin遺伝子の形質導入をおこなった。培養後48-72時間の時点で蛍光顕微鏡、レーザー顕微鏡にて観察した。GFP遺伝子を挿入することによりGFPの蛍光にてprestin遺伝子の導入を確認した。 2)器官培養コルチ器内にGFPの蛍光を認めた。さらにrhodamineにより、有毛細胞を染色したところ、GFPの蛍光は内外有毛細胞の配列に一致していることがわかった。 結論:超音波遺伝子導入法によるprestin遺伝子の器官培養コルチ器への導入に成功した。これまでウイルスベクターほどの導入効率が得られていないといった報告があり、今後の検討が必要である。
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