研究課題/領域番号 |
15659406
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
暁 清文 愛媛大学, 医学部, 教授 (00108383)
|
研究分担者 |
羽藤 直人 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (60284410)
白馬 伸洋 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70304623)
篠森 裕介 愛媛大学, 医学部附属病院, 助手 (60335908)
|
キーワード | 外耳道造設術 / 軟骨移植 / 鼓膜浅在化 / 外耳道閉鎖症 / 肉芽組織 / 伝音性難聴 / 軟骨カッター / 肋軟骨 |
研究概要 |
鼓室形成術の発展に伴い中耳疾患に対する手術成績は著しく向上したが、技術的に単純と思われる外耳道閉鎖症の手術成績は今なお概して不良である。せっかく外耳道を造設しても、骨削開面からの肉芽増生や形成鼓膜の浅在化、移植皮膚の感染などのため、やがて外耳道の再閉鎖が始まり、一旦改善した聴力は次第に悪化することが多い。一方、軟骨は栄養状態が悪い環境下でも生着し、感染にも強いことから移植材料として最適の素材と考えられる。そこで我々は外耳道を軟骨で補強することにより、術後の肉芽増殖や鼓膜浅在化が防止できるのではないかと着想し以下の研究を行った。 基礎研究にはモルモットを用いて実験を行った。耳後部に切開を加えて耳胞を開放、外部から中耳骨胞に至る「穴」を形成した。その後、A群では反体側の耳介から軟骨を軟骨膜とともに採取してリング状とし、上記の造設した穴に縫合して外耳道を形成した。B群では軟骨の代わりに筋膜を、C群では表皮を、それぞれ造設した穴に縫合して外耳道を形成した。術後は定期的に観察し、4週後に組織を採取、外耳道の形態と外耳道周囲の組織学的変化を検討した。その結果、外耳道を軟骨で形成することにより肉芽の増殖が阻止できることを明らかにした。一方、B群やC群では高頻度で肉芽の増殖が生じ、外耳道は狭窄傾向を示した。 この結果を活用し、実際の症例において軟骨を用いた外耳道造設術を施行した。症例は11歳の男児で、左側小耳症と外耳道閉鎖症の合併例である。外耳道造設術は耳介形成術と同時に行なった。軟骨カッターを用いて肋軟骨を厚さ0.2-0.3mmの板状に切断し、これをトリミングして外耳道の骨削開面に貼り付けたところ、術後、肉芽増殖はおこらず外耳道の形態は安定していた。本法は外耳道閉鎖症の新しい術式として有望であると結論した。
|