本研究は、アレルギー性結膜炎のとくにeffector phaseに関わる肥満細胞の活性化因子を治療標的として同定することを目的とする。そこで、解析の第一段階として、モデルマウス系を用いてアトピー性結膜炎の病理学的側面を検討した。具体的には、アトピー性皮膚炎のモデルマウスであるNC/Ngaを用いてアレルギー性結膜炎を惹起させ、その病理像の解析を行った。その結果、NC/Ngaにおいてもアレルギー性結膜炎の即時相の臨床症状は肥満細胞の脱顆粒と有意かつリニアに相関しており、肥満細胞自体の治療標的としての妥当性を確認した。さらにアレルゲン点眼後の結膜肥満細胞の浸潤は血清中総IgEレベルではなく抗原特異的IgEと有意な相関を示し、抗原特異的IgEの刺激により肥満細胞の脱顆粒のみならず活性化がひきおこされることが示唆された。次に、抗原特異的IgEにより誘導される因子を網羅的に検討するため、刺激後のトランスクリプトームの解析を開始した。この解析手法として、微量のRNAからの全ゲノムスキャン解析が可能なLinear Amplification法を採用し、現在そのラベリングを含めた至適化プロセスを完了した。 また、in vivoでの肥満細胞移入実験には、レシピエントとしての肥満細胞欠損マウスを用いる必要がある。このため、c-Kit欠損であるWBB6F1-Kit^w/Kit^<W-v>のアレルギー性結膜炎モデルの病理像の解析に着手した。即時相をみた場合、WBB6F1-Kit^w/Kit^<W-v>においては、アレルゲン点眼後においてもアレルゲン点眼後の臨床症状がおこらないことを確認した。 次年度は、詳細なトランスクリプトームの解析をさらにすすめ、標的としてあげられた候補遺伝子の機能確認を行う予定である。
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