研究概要 |
角膜組織は単純な5層構造をとっており,角膜に可視光線をあてることによりそれぞれの構造物由来の散乱光が生じる。この散乱光強度を測定するために、ハロゲン光を光源とし,散乱光検出のために鏡面反射原理と共焦点光学系を併用した新しい角膜組織散乱光測定装置(code name : YAMA)を開発した。この装置は検出系が角膜上皮と涙液およびcoupling gelを介して角膜上皮に接触することにより常に角膜と垂直に位置することにより安定した計測ができる。検出系内に対物レンズが内蔵され,検出系内を角膜上皮側から内皮側へと移動することで角膜内構造物をスキャンし,角膜内構造物からの組織散乱光を検出する。検出された散乱高強度は数値化され,対物レンズのZ軸位置に対応させて角膜組織散乱光波形(Z-Scan wave)を描出することができる。今回の研究では,YAMAで得られたヒトにおけるZ-Scan waveの再現性を検討した。YAMAで検出できたZ-Scan waveは,これまでほかの生体焦点顕微鏡で得られていたZ-Scan waveと同様に3つのピークを有している波形を検出できた。そこで,角膜上皮最表層を示すfirst peakから角膜内皮細胞層を示すthird peakまでを角膜厚として測定した。同一対象を繰り返し7回測定したときのYAMAでの角膜厚は560.1±8.5μmであり,角膜厚測定に一般的に用いられている超音波パキメーターで計測した値557.7±2.3μmと比較しても有意な差は見られず,非常に近似した値を得ることが可能であった。また,正常ボランティア眼76眼を測定しYAMAでの測定値と超音波パキメーターの測定値との比較を行ったが,両者の測定値は高い相関係数(r=0.86,Pearson積率相関係数)を示した。来年度以降は組織散乱高強度を示すZ-Scan wave値の再現性を検討し,機器の改良を行う予定としている。
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