研究概要 |
1.角膜上皮細胞培養:polycarbonateインサート上に、上皮細胞を除去した羊膜を置き、その上に輪部を含む角膜上皮を培養した。培養液が培養角膜上皮の表面を覆った状態で合計4週間培養を継続したグループ、3週間目以降は培養液が培養角膜上皮の表面を覆わない状態に保ったものつまりair liftingしたグループの2種を作成した。 2.形態学的検索:走査型電子顕微鏡にて培養細胞、特に細胞間接着部位の形態を観察しさらに細胞間距離を測定、解析ソフトを用いて定量化したところ、air liftingしたグループでは細胞間距離は小さく平均0.15μm^2±0.12S.D.であるのに対し、していないグループでは平均1.15μm^2±0.66S.D.と細胞間距離は大きかった。単位面積あたりdesmosome教もair liftingによって約4倍に増加した。透過型電子顕微鏡での観察では、air liftingしたグループは細胞間の噛み合わせがより強固であった。 3.免疫組織化学的検討:Tight junction関連の接着蛋白であるZO-1,occludinとclaudin-1に対する抗体を用いて、間接蛍光抗体染色法をおこなった。air liftingしていないグループではこれらの蛋白は細胞質内やbasal membraneにも分布していたが、air liftingをしたグループではlateral membraneのtight junctionの存在部位に局在していた。 4.蛋白量の測定:各々のグループの培養角膜上皮細胞より蛋白を抽出し、western blotting法で接着因子を検出した。同じサンプルよりactinも同様に検出し、接着因子とactinの比を得ることによりグループ間の接着因子蛋白量を比較したところ、粗織内に存在するoccludinおよびclaudin-1量には変化が無かった。 以上より、air liftingにより培養角膜上皮間の接着は強固になるが、それはtight junction関連蛋白量の増加よりも、局在の変化によるところが多いと考えられた。難治性の角結膜上皮疾患に対しての再生治療として我々は、ヒト培養角膜上皮シートの作成とそのシートを使った移植治療を試みている。air liftingにより培養細胞が上皮としての特性をより強く発現するよう分化誘導されたという今回の研究結果はair lifting法が我々の角膜上皮培養系に有用であることを示している。
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