研究課題/領域番号 |
15659418
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
妹尾 春樹 秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)
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研究分担者 |
加藤 哲夫 秋田大学, 医学部, 教授 (20004963)
萱場 広之 秋田大学, 医学部, 助教授 (70224706)
吉野 裕顕 秋田大学, 医学部, 助手 (90182807)
入江 俊明 函館工業高等専門学校, 教授 (90231167)
芳川 究 秋田大学, 医学部, 助手 (90400481)
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キーワード | ヤツメナギ / 胆道閉鎖症 / 胆汁酸 / コレステロール / ビタミンA / 微細形態 / 星細胞 / 毛細胆管 |
研究概要 |
ヤツメウナギ(Lampetra japonica)は川で孵化して幼生となり、海に移動し、成体となり、大きな魚の腹部に寄生しその魚の体液や組織を吸収することで栄養を摂取する。やがて、産卵回遊期になると、その魚を離れて川を遡り産卵して一生を終える。ところで幼生の間には胆道系が存在しているが、成体においては胆道系は消失している。いわばヒトにおける胆道閉鎖症の状態であるにもかかわらず黄疸や肝臓障害はみられない。また全身の器官に大量のビタミンA(以下A)を貯蔵している。そこで、それらの機構を明らかにするため以下の実験をおこなった。 幼生および産卵回遊期のヤツメウナギにおける胆道・肝臓の微細形態とAの貯蔵を解析した。さらに、コレステロールの処理機構を^<14>Cで標識したコレステロール(ヒトの場合コレステロールは最終的に胆汁酸に代謝され胆汁中に排泄される)を腹腔背側の静脈内に投与して、1時間後、3時間後、17時間後に胃、腸、肝臓、腎臓、皮膚、生殖器、眼、鰓、筋肉、血清の放射能を測定した。 産卵回遊期には総胆管や小葉間胆管のみでなく毛細胆管も消失していた。肝臓には星細胞が多量のAを貯蔵して肝小葉と結合組織に分布していた。実質細胞には脂質の貯蔵が観察されたが、肝線維化や肝硬変は見られなかった。幼生では複数の肝実質細胞から形成される毛細胆管がみられ、胆道系が存在した。実質細胞には脂質の貯蔵はなかった。Aはどの器官にもほとんど貯蔵されていなかった。放射能は腸以外の各器官では3時間後にピークが見られた。湿重量あたりでは鰓が常に最も高く、ついで腎臓、心臓であり、他の器官の放射能は低値であった。器官全体の放射能も鰓、腎臓が多く、他の器官はわずかであった。胆道系が完全に閉鎖したヤツメウナギは鰓と腎臓をコレステロールの排泄に用いている可能性が示唆された。成体の星細胞系における大量のAの貯蔵が胆道閉鎖によるAの排出系の機能低下による可能性が示唆された。
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