研究分担者 |
北川 博昭 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (80153097)
小池 淳樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (40308440)
佐藤 英章 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (70339852)
佐藤 百合子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (80318948)
中田 幸之介 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70081734)
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研究概要 |
目的:胎児の創傷治癒は非瘢痕性治癒(scarless healing)と言われている。しかし胎児期に形成された手術創の治癒過程を論じる創傷は鋭利な創傷治癒である。今回羊を用いて背部に裂創(incisional wound)を作成し、その治癒過程を検討した。 実験方法:胎生60日の妊娠羊を用いてその背部に約2 3cmの裂創を作成しその両端に非吸収性糸を用いてマークをつけた。145日が満期の羊に対し術後1,3,5,7,24,31、145日に再度帝王切開を行い胎児の背部の創を観察し病理学的検討用に切除した。これらの創傷治癒と、胎仔手術において下肢を保持し圧迫を加えた創の治癒過程を観察し、両者を比較検討した。 結果:22匹の胎仔の背部に裂創を作成しその後の経過を観察したところ、術後7日には創部は結合組織でおおわれた。しかし、肉眼的に術後31日でも創部を確認することができた。しかし、145日の満期では視診で創を確認することはできなかった。組織学的な検討では術後2日で結合組織は形成されるが表皮で覆われるには14日かかった。満期の145日では表皮で被われたが正常皮膚と比較すると毛根や、皮脂腺などの腺細胞の欠落を認め、発生過程で形成されるべき組織の欠損を認めた。また胎仔手術において、下肢を圧迫して把持した部分は毛根が欠落した著しい瘢痕組織を呈していた。 結論:胎児期の創傷治癒において、引き裂いた裂創も、縫合せずに治癒するが皮脂腺や汗腺などの付属組織の低形成を認めた。しかし、胎児期に圧迫を受けた血流障害を伴った創に対しては創傷治癒機転は働かなかった。
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