研究概要 |
重度免疫不全マウスとしてミュータントマウス、SPF/VAF Crj:CD-1(ICR)-nu雄、計35匹を用いた。母指多指症で余剰指の切除術を行った3名のヒト指から採取した新鮮爪組織をマウスの左腎臓の被膜下に移植した。患者家族には倫理規定に基づいた説明を行い同意を得た。ヒト爪をG:germinal matrixだけ,S:sterile matrixだけ,GS:germinal & sterile matrixを一緒に、GSD:germinal, sterile, and dorsal matrixを一緒とした4群に分け移植した。移植後3日、1週、2週、4週、10週目で腎臓を摘出した。摘出前30分から1時間前にマウス腹腔内にBrdU:0.3ml/30gを投与してからマウスを処理した。 これにより、ヒト爪組織は免疫不全マウスの腎被膜下へ移植モデルで生着しうることがわかった。ケラチン染色(Martinotti)によって移植した爪組織から爪甲が新生されたことを確認した。続いてA, B, Cの爪組織の部位別の移植結果では、Gでは1個の爪組織を生成し、Sでは大小不同の多数の細胞集塊を形成し、皮膚角質の産生だけで爪甲形成はみられなかった。GSでは爪の生成をみとめるが皮膚角質との混在を示し、多数の細胞塊をみとめた。GDSでもGSと同様の結果であった。各郡全てで細胞は球状の集塊を形成してその中心部分に向かって皮膚角質や爪甲を生成していた これよりこの免疫不全マウスの腎被膜下への移植系はヒト爪組織の生体実験系として用いることが出来ることを明らかにした。各種染色によってこの移植系で生成された爪組織の分裂能や爪組織の生成を確認した。またこれまで爪甲の生成に関する起源説は組織学的に論じられてきたが、今回爪組織の成分別の移植系を用いることでgerminal matrixが爪甲形成に必要十分なものであるという一源説の裏付けを得た。
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