研究概要 |
マウス長管骨より骨髄細胞を採取し、macrophage colony stimulating factor(M-CSF)で2日間刺激し、さらにM-CSFおよびreceptor activator of NF-kB ligand(RANKL)で3日間培養し、破骨細胞様細胞を分化させた。培養開始、、培養2日目で、種々の濃度のシスタチンC(CysC)を添加した。培養後total RNAを抽出し、破骨細胞の分化マーカーのmRNA発現をreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)法で解析した。CysC無添加群と比較して、CysC全期間添加群ならびに前期(培養2日目まで)添加群では、receptor activator of NF-kB(RANK), tartrate-resistant acid phophatase(TRAP), c-FosのmRNA発現に変化は認められなかった。後期(培養2日目以降のみ)添加群では、RANK,TRAP,c-FosのmRNA発現していなかった。後期添加群ではnuclear factor of activated T cells 2(NFAT2)ならびにTNF receptor-associated factor 6(TRAF6)の各mRNA発現していなかった。全期間添加群のNFAT2の発現が減少していたこと、さらに全期間添加群ならびに前期添加群において、TRAf6の発現が上昇していた。象牙質片上で培養した各細胞群を透過型電子顕微鏡で観察した。CysC無添加細胞群では、象牙質片側に刷子縁が発達し、細胞内部に大小の空胞を有する破骨細胞の特徴を備えた細胞が観察された。全期間添加群ならびに前期添加群の細胞では刷子縁の脆弱化が認められた。また、CysC後期添加群の細胞では、刷子縁を具備しておらず、マクロファージ様細胞を呈していた。CysCを後期のみ添加した細胞群を、CysCの刺激が存在しない条件下で、M-CSFおよびRANKLの共刺激下で培養を続けると、TRAP陽性の多核細胞が出現した。この細胞を象牙質片上で培養すると、吸収窩が認められた。以上の結果から、CysC培養後期のみに作用させることで、破骨細胞の分化が阻害される事が判明した、さらに、この分化阻害された細胞をCysCの刺激を除去する事で、可逆的に破骨細胞へ分化することが明らかとなった。現在、マクロファージの表面マーカーを用いて、CysCを作用させた骨髄細胞のcriteriaを検討中である。以上の興味ある研究成果を国際雑誌へ発表するために、英文論文を作成中である。また、研究期間中、関連論文を2編、国際誌に発表した(11.参照)。
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