研究概要 |
歯髄が頭部神経堤由来の間葉細胞によって形成され、神経や血管に富んだ骨髄に類似した組織であることを考慮すると、骨髄と同様に多能性のある組織型幹細胞が存在することが想像できる.そこで,マウス下顎切歯形成端の歯乳頭並びに歯小嚢細胞を分離培養し,ヒトパピローマウイルス16型E6あるいはE6,E7遺伝子を用いて不死化細胞を作製した.歯乳頭由来の細胞をMDP1E6またはMDP1E6E7と歯小嚢由来細胞をMDF1E6またはMDF1E6E7とした.現在,これらの細胞の中でMDP1の発現する遺伝子についてRT-PCRを用いて解析を行った.通常の培養方法では,細胞外基質としてはタイプ1コラーゲン,骨シアロタンパクは発現するものの,象牙質シアロタンパクやオステオポンチン,オステオネクチンは発現しない.また,細胞増殖因子についてはエナメル上皮幹細胞の維持,細胞分裂を誘導する線維芽細胞増殖因子-10を発現することを確認した.MDP1E6が神経細胞に分化する能力を持っているかを確認するために神経細胞の前駆細胞に発現し,神経細胞への分化を誘導する転写因子であるmash-1を遺伝子導入し,分化形質の変化を検討したところ,この細胞の中に神経の分化マーカーの一つであるPGP9.5を発現する細胞を認めた.この結果より,MDP1E6には,神経細胞に分化可能な細胞が存在することが示された.次年度は,これらの細胞のクローニングをすすめ,細胞外基質や増殖因子の発現量についてリアルタイムPCRを用いて検討する.また,さまざま培養条件や脱メチル化,遺伝子導入などを用いた分化誘導を検討し,歯髄の間葉系細胞の多能性を検討する.
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