研究課題
歯乳頭細胞歯髄を構成する様々な細胞へと分化するが、歯の発生過程では神経細胞になることはない。しかし、歯乳頭細胞と同じ神経堤由来の細胞の中には、体内の歯胚以外の部分で神経細胞に分化するものもある。加えて歯乳頭には、多分化能を持つ組織幹細胞が存在することも報告されている。そこで、歯乳頭の間葉系幹細胞の神経細胞への分化誘導法について検討した。マウス切歯の組織免疫学的検索により、歯乳頭の未分化間葉細胞よりも分化した象牙芽細胞において神経前駆細胞のマーカーであるnestinや神経栄養因子受容体p75NGFRを発現していた。一方で、骨シアロタンパク(DSP)や骨形成因子(BMP)といった石灰化に関する因子も分化に伴って発現し、アルカリフォスファターゼ活性も上昇する。つまり、歯乳頭の未分化間葉系細胞の象牙芽細胞への分化は、神経前駆細胞の分化と石灰化能を持つ細胞への分化の両面を併せ持つと考えられた。さらに、歯乳頭由来一次培養細胞を用いた検索では、nestin、musashil、p75NGFRといった神経前駆細胞マーカーを発現する細胞は認められたが、DSPは発現していなかった。この一次培養細胞をヒトパピローマウイルスにより寿命延命措置を施した上で、神経前駆細胞を成熟ニューロンへと分化させる上で多くの神経系で必須の転写因子であるmash1を強制的に導入させて神経細胞への分化誘導を試みた。mashi1遺伝子導入細胞は、nestin、musashi1、p75NGFRを導入前と変わらずに発現していたが、成熟ニューロンの分化マチル化剤を用いて細胞を処理した後に同様の実験を行ったが、neurofilamentの発現誘導には至らなかった。以上より、mashi1単独での遺伝子発現では成熟ニューロンへ分化誘導することはできないが、歯乳頭の間葉細胞は神経前駆細胞としての特徴を保持しているが明らかになった。また、同様に歯小嚢細胞にも神経前駆細胞としての性質を保持していることも明らかとなった。
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