研究概要 |
本年度は、前年度のin vivoでのヘルトビッヒ上皮鞘(HERS)細胞内の細胞増殖活性の研究を基に生後5日齢:歯根形成開始期を中心にepidermal growth factor (EGF)、fibroblast growth factor (FGF)、platelet-derived growth factor (PDGF)に注目して実験を行った。 1: PDGFのHERS発達に対する影響 0,2,20,200ng/mlの各濃度を培養液に投与して器官培養を行った結果、PDGFはHERSの発達を促進.することが分かった。対照群(0ng/ml)の培養7日目の臼歯はHERSが神長し、歯形成の進行が観察されたが、2,20,200ng/mlPDGFを添加した培地で培養された臼歯はさらに発達し、その効果は濃度依存的に促進され、昨年度報告したIGF-Iの作用と類似していた。 2: EGFのHERS発達に対する影響 0,10,100,500ng/mlの各濃度を培養液に投与して器官培養を行った。その結果、培養7日目の対照群(0ng/ml)の臼歯ではHERSが伸長し、歯根形成の進行が観察されたが10,100,00ng/mlEGF添加群では内外エナメル上皮層だけで形成される典型的なHERSの組織構築が乱れた。現在その原因について、HERS周辺組織における細胞増殖も併せてさらに検討を進めている。 3: FGFのHERS発達に対する影響 FGF-7,10について添加濃度を変え、臼歯歯根形成に対する影響を検討したが、HERS発達・歯形成への影響は観察できなかった。 FGFは胎生期歯胚の上皮間葉相互作用において重要な役割を果たすことが知られるが、歯根形成開始期の歯胚発達にはIGF-IやPDGF, EGFが重要な役割を果たすと考えられた。
|