前年度までの実験に引き続き、細胞株で相同組み換えを行うためのベクターの改変、targeting vectorの作成、およびgene targetingを行う際の遺伝子導入条件の検討を行った。knock-in vectorとなるプラスミドは、遺伝子発現マーカーとしてIRES-EGFP、選択マーカーとしてneomycinを用いた。さらにnegative selectionとしてHSV-TK遺伝子を置き、neomycin遺伝子はloxP siteではさんだ。前年度に単離したDspp遺伝子ゲノムを挿入し、そのコンストラクトを間葉系幹細胞C3H10T1/2細胞に遺伝子導入した。その際、ほぼ同じサイズの(15kb)コントロールプラスミドを用いて導入効率を検討した。さらに、ES細胞ではtargetingを行う配列によって相同組み換えの起こりやすさが異なることが知られているため、すでにES細胞においてgene targetingが行われた遺伝子に対するknock-in vectorプラスミドを作成し、それを相同組み換えのモニターのpositive controlとした。すなわちRecQL4遺伝子に対するknock-in vectorを用い、遺伝子導入後、選択培地で培養し、いくつかのクローンを回収した。それら選択クローンを増殖させ、DNAを回収し、knock-in vectorの挿入部位近傍の配列決定を行った。現時点までに、RecQL4遺伝子、Dspp遺伝子ともに目的とされる部位には挿入されていない。相同組み換え実験を細胞株で行うために必要な条件、すなわち、高い遺伝子導入効率、大量の選択クローンのスクリーニングである。おそらくES細胞に比べ組み換え効率は2桁近く低いことが予想されるため、この条件をクリアすべく更なる検討を行っている。
|