TGF-βは多様な生理活性を持つサイトカインであり、標的タンパクの発現調節を介してこれらが営まれている。近年標的タンパクの発現調節にはmRNAレベル以外にもmRNAの安定性や翻訳調節による制御が明らかになりつつあるため、本研究ではこのような背景を基に研究を進めている。Smad7はTGF-βによって早期に発現誘導されるタンパクの1つであり、TGF-βシグナルを抑制することによってネガチィブフィードバック機構を形成している。またSmad7は非常に長い5'UTRを有し、さらにこのUTR内には複数のストップコドンが認められることから、通常のcap依存的な翻訳の効率は非常に低いことが考えられた。そこで、IRES(internal ribosomal entry site)による翻訳制御の検討を試みた。まず、マウスの染色体DNAからSamd7の5'UTRを得、dicistronic-luciferaseを用いて検討すると、IRESの存在が考えられた。しかしながら、他のluciferaseによる解析から、これらの結果はIRESによるものではなく、これまで報告のなかったpromoterの存在を示唆した。従って、予想されたIRESの存在は否定されたが、smad7のpromoterにはFOXやSki等の転写調節因子が複雑に作用している結果を得ているので、現在smad7やTGF-βが誘導する遺伝子の転写調節に関す研究を進めている。
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