研究課題
歯髄細胞の分化においてはいまだに不明な点が多い。近年、永久歯および乳歯の歯髄細胞の一部がstem cellとしての能力を有しており、骨芽細胞のみならず、脂肪細胞、神経細胞に特徴的なマーカーの発現を誘導できることが明らかになった。しかし、歯髄組織は多様な細胞の集合体であり、どの細胞がstem cellであるのか、見分けるのは現在のところできていない。また、歯髄における硬組織形成細胞である象牙芽細胞への分化においても、どの細胞がオリジンであり、どのようなメカニズムで、どのような因子が関与して分化するのかについてもいまだ不明である。歯髄細胞および歯根膜細胞における幹細胞としての可能性を追求することが、本研究の目的であるが、まず歯髄組織の特徴をグローバルに検討することを目的として、cDNAアレイを歯髄組織に応用した。その結果、歯髄組織においては際立ってFibroblast growth factor(FGF)18の発現が高いことが明らかになった。FGF18はFGFファミリーに属する成長因子で、現在までに骨組織における発現が高く、硬組織形成に関与する可能性が示唆されている。In vitroの実験系において、FGF18は歯髄細胞の増殖を強く誘導した。また、FGF18の存在下において歯髄細胞のアルカリフォスファターゼ活性は低下し、石灰化結節の形成は阻害された。一方、形態学的検討を行った結果、初期歯胚の間葉および歯乳頭においてFGF18およびFGFr3の発現が認められ、歯髄の発育にFGF18が関与している可能性が示唆された。さらにFGF18欠損マウスにおける歯胚を観察したところ、歯胚の形成そのものには異常がなかったものの大きさが有意に小さい傾向が明らかであった。したがって、FGF18は歯および歯髄の発育に必須の遺伝子であることが示唆された。(778字)
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J Dent Res 84(8)
ページ: 762-767
Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontolog 2006(In press)
J Dent Res (In press)