研究概要 |
本研究においては,歯根膜幹細胞の種々の細胞への分化に関する成長因子の同定および分化した細胞の遺伝子発現様式の差異を明らかにすることを目的に,以下の研究を行った. WKAウィスター系5週齢雄性ラットから,下顎切歯を抜去し,15%FBSおよび抗生剤を含むα-MEM中に静置し,2週後まで初代培養し,アウトグロースした細胞を歯根膜細胞として回収した.回収した細胞を,デキサメサゾン(Dex),アスコルビン酸(Asc),βグリセロフォスフェイト(βGP)を含む培地とこれらを含まないコントロールの培地の2種の培地で2週間培養し,骨関連タンパクであるオステオカルシンと歯根膜特有のタンパクであるXII型コラーゲンについてRT-PCRを行いmRNAの発現を検索した.XII型コラーゲンの発現は,コントロールとDexを含む培地の両者に同様に認められたが,オステオカルシンはDexを含む培地で著しく強く発現していた.この結果から,Dexで骨芽細胞に誘導される幹細胞が,採取された歯根膜細胞には含まれることが明らかとなった.この結果をもとに,Dexを含む培地,b-FGFを含む培地およびこれらを含まないコントロール培地の3種の培地で歯根膜細胞を3日培養した後,RNAを回収し,DNAマイクロチップで網羅的にmRNAの発現を解析した.その結果,mRNAの発現は,b-FGFを含む培地とコントロールの培地では,ほとんど差異が認められなかったが,Dexを含む培地とでは差異が認められた.この結果から,b-FGFは歯根膜幹細胞を分化させることなく増殖させ,またDexは,歯根膜幹細胞を骨芽細胞へ分化させることが示唆された.
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