相分離観察の準備として、用いるゼラチン(ウシ皮膚ゼラチン)のゲル化に関する相図を作成し、ゼラチン濃度とゲル化温度の関係を調べた。ゲル化点は落球法により決定した。ゼラチンと組み合わせる非相溶の親水性高分子としては、分子量の異なるポリエチレングリコールを用いるため、分子量の違いが相分離挙動にどのような影響を与えるかを、引き続き調べる予定である。 また、相分離構造を固定する方法を調査し、その一つとしてグルタルアルデヒドによるゼラチンの架橋が、ゼラチンゲルの固定に有効であるという見通しを得た。次年度は、ゼラチンに富む相のみを固定するような架橋条件を検討する。 当初は、非相溶高分子成分の一方を色素で選択的に染色し、相分離構造を着色の濃淡で観察することを計画していたが、系本来の相分離挙動に影響を与える可能性のある相互作用をできるだけ排除するために、色素を用いない観察方法に計画を変更した。そのため、予定していた相構造観察用光学顕微鏡を位相差仕様に変更し、相分離状態での界面を観察するための予備実験を、明確な分離相構造が安定に分散する、脂質ベシクル系で行った。ある程度遅い相分離過程であれば、その進行を動画として記録できる見通しが立った。また、相分離のうち、スピノーダル分解を実現するための温度ジャンプの方法を再検討した。ゼラチン/ポリエチレングリコールの相図ができ次第、温度ジャンプの速さと相分離進行状態の関係を調査する予定である。
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