研究課題/領域番号 |
15659467
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
根津 尚史 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助手 (40264056)
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研究分担者 |
寺田 善博 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (30038898)
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キーワード | 非相溶性生体高分子 / 相分離(スピノーダル分解) / ゲル化 / 規則構造 / 構造の周期性 / フーリエ解析 / 網目構造 / スキャフォルド |
研究概要 |
相互に溶解性の低い高分子の溶液同上を混合した系で、温度ジャンプにより生ずる相分離を、光学顕微鏡で観察する実験を行った。そこで見出された構造のフーリエ解析から、相分離過で現われる分離相構造の規則性を詳細に調べた。 試料:非相溶性の水溶性高分子として、I型ウシ皮膚ゼラチン(BSG)と分子量50万のポリエチレングリコール(PEG)を用いた。溶媒としてはpH3に調整した蒸留水を用いた。 相分離観察:種々の濃度のBSG+PFG溶液について、均一状態(1相)の高温から低温への急冷を行い、急冷直後から1時間にわたって光学顕微鏡(位相差モード)でデジタル画像記録を行った。この方法では色素を用いないため、色素添加による系への影響が無い。急冷直後より微小な濃淡(海島構造)の発生が認められ、経時的にその大きさが大きくなる様子が観察された。また、20分以降は大きな変化がなく、完全な2相分離も認められなかった。相分離で生じたBSG濃厚相が急冷後の低温でゲル化して、相分離進行中に海島構造が固定されたことが示唆された。 画像のフーリエ変換:得られたデジタル画像について、画像解析ソフトウェアScion Image(Scion Corporation製)でフーリエ変換(FT)を行い、FT画像に現われるパターンの周期性を、自作の解析プログラムで調べた。一方、既知の周期性を持つ単純パターン画像についても同様の解析を行い、周期性とFT画像のパターンの対応を、詳細に検討した。その結果を実際の相分離画像に適用し、相分離で生じた構造の周期性を抽出した。FT解析から得られたサイズが顕微鏡画像から直接読み取られる構造のサイズに比べて小さいのは、後者ではより小さな構造を見落としていることによると思われる。 これらの結果より、ゲル化を伴う高分子溶液系の相分離では、その中間状態を固定することが可能であり、得られた構造のフーリエ解析から、分離相構造中の周期性をより簡便かつ客観的に抽出することができることが明らかになった。一方、実現に至っていない、網目状に発達した相構造の生成に向けて、今後も条件の検討が必要である。
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